日図協全国大会出席報告
私たちのNPOの話をしてほしいと依頼され、10月30日、日本図書館協会の第93回全国図書館大会に出席してきました。
私が発表したのは第17分科会「図書館の管理形態の多様化を検証する―これからの図書館振興を考える―」でした。
まず、関東学院大学教授山本宏義氏 の「公立図書館における指定管理者制度導入の現状について」という基調報告がありました。次に事例発表に移り、指定管理者制度を取り入れないと決定した豊中市の、豊中市立図書館長・谷垣笑子氏から「指定管理者制度導入をめぐる検討課題とその後」、つぎに指定管理者制度に移行した明石市立図書館から、指定管理業者の株式会社NTTデータPFI推進部長・日高昇治氏から 「NTTデータの新しい公共サービスへの取り組み」、続いて上原良蔵氏・明石市立図書館長から「明石市立図書館の管理と運営」の発表がありました。最後に私が「業務委託によるNPOの図書館運営」と題して発表してきました。
持ち時間が30分づつと短かったので駆け足の報告になりましたが、伝えたいことは話してきたと思います。
終了後たくさんの方々からお声をかけていただき、特に明石館長の上原さんから「とても良かった。お宅のNPOは大丈夫だと思いましたよ。」と言っていただいたのはとてもうれしかったです。
大会は全国から多くの人が参加し、とても大きな集まりでした。
その中でも私の発表した第17分科会は一番人気で、160人の申し込みがあり、実際は180人以上の方が出席していたと思います。会場で出会った友人は、17分科会を希望したのに定員いっぱいで参加できなかったと言ってました。
いかに、図書館の業務委託・指定管理者問題に大きな関心が集まっているかということですね。
ちょっと長いですが、以下は大会要項に載せた発表の要旨です。
第17分科会 図書館管理形態の多様化を検証する
「業務委託によるNPOの図書館運営」
NPO法人げんきな図書館 理事長 磯村 彩
1.NPO設立の経緯と業務受託
中野区の図書館は2004年から業務委託が開始された。それに伴ない1989年から続いていた図書館非常勤制度が廃止され、30名(2名欠員)の非常勤職員は全員解雇になった。
私たち非常勤職員は、非常勤制度廃止・委託開始が決定した2003年に、自らが受託業者になることを目指してNPO法人を立ち上げた。
プロポーザル方式で業者選定が行なわれ、ティーアールシー・サポート・アンド・サービス(2006年度で委託打ち切り)、大新東ヒューマンサービス、ヴィアックス、NPO法人ぐーぐーらいぶ、NPO法人げんきな図書の5者が受託業者に選ばれた。
げんきな図書館は東中野図書館と江古田図書館の2館を受託し、元非常勤職員9名と、長く臨時職員をしていた者13名の計22名でスタートした。現在は同2館を27名で運営している。
2.中野区の委託形態
中野区には中央館と7地域館の計8館の図書館がある。
昨年度まで地域館には館長がいたが今年度からは区の職員はすべて引き上げとなり、施設管理も含めて地域館の業務はすべて委託された。7地域館の館長は1名のみ、中央館に在籍している。各地域館の委託スタッフのチーフが副館長扱いとなっている。
委託業務の中には毎週のおはなし会の運営、年5回以上の子ども会の企画運営、各館の図書館だより作成、学校訪問および職場体験の対応も含まれている。施設管理業務では日常の施設点検、異常発生時の業者連絡、防火訓練の計画・実施、苦情処理及び危機管理、防犯設備作動時の対応、システムトラブル時の業者連絡などが委託されている。
中央館では昨年度までは参考室は委託されてなかったため区職員もカウンターで利用者に接することができたが、今年度からは参考室も委託された。
中央館には今年度、中央館長のほか管理係(6名)、資料情報サービス係(10名)、子ども読書推進係(5名)、地域館支援・調整係(6名、再任用1名)の、28名の区職員がいる。
選書だけは委託されていない。8館すべての選書は資料情報サービス係が行なっている。また寄贈と除籍は、委託スタッフが受入・除籍・保管転換などの候補を挙げ、月に1回区職員が各館に来館し承認する形になっている。
子ども読書推進係は、児童書の選書と、中野区の児童サービスの方針を決定し具体的業務を各館へ指示している。
地域館支援・調整係は、委託業務の調整・連絡、システム運営などを行なっている。
3.NPO自主事業
業務委託のため、受託図書館の運営は仕様書の範囲内で、かつ中央館にいる区職員の支持に従って行なわれている。NPOといえども自由裁量は許されていない。したがってげんきな図書館の行なう事業は受託図書館主催とはならず、すべて自主事業となっている。
今年度の事業計画は以下の通り。
○研修事業(9回)
4月 手袋人形講座
5月 児童サービス研修
6月 修理本研修
9月 レファレンス研修
10月 ブックトーク研修
11月 図書館見学会
1月 児童サービス研修
2月 出版事情研修
○講座・講演会事業(4回)
6月 「一緒につくろう、手ぶくろ人形講座」
8月 「志茂田景樹の よい子に読み聞かせ隊がやってきた」
10月 「絵本と出会う前に 第1回 ベビーマッサージ・手遊び」
11月 「絵本と出会う前に 第2回 初めて出会う絵本」
○地域交流事業(3回)
7月 チバリヨー!なかの(本の展示、ブックリスト作成、読み聞かせ)
10月 江古田地域まつり(手作り絵本)
12月 地域フェス2007(本の展示、ブックリスト作成、ブックトーク)
○情報発信事業
「なかの図書館MAP」作成(イベント時に配布)
げんきな図書館ホームぺージ上で「おすすめ本コーナー」を運営
○その他
9月 「ワークスタート支援プログラム」協力(ニート・引きこもり就労支援)
研修事業は、私たちのNPOのスタッフだけでなく、中野区で働く他の会社のスタッフにも参加を呼びかけている。中野区の図書館全体のレベルアップを図ることはもちろんだが、中野区の図書館を担っている者同志として横の繋がりを作っていくことを狙いとしている。毎回他業者のスタッフから5名ほどの参加がある。
講座・講演会事業はげんきな図書館主催、地域交流事業は他団体が主催するイベントに参加して、読書推進活動を行なっている。
以上の事業はすべて受託図書館の事業ではないため近隣の施設を借りて開催している。
その中で「ワークスタート支援プログラム」は受託業務内で自主事業を行なうことができた。同事業は東京都のニート・引きこもり就労支援事業で、このプログラムの中の職場体験の事業所として、受託している東中野図書館で受け入れることを中野区から許可された。受け入れは中学生の職場体験と同じ規模の3日以内・3人以内という条件がついたが、初めて受託業務と自主事業が一致することができ、大きな前進だととらえている。
4.課題
1、受託継続
委託契約は単年度契約だが、委託開始当初3年間は業者を変えないとの約束があった。4年目となる今年度は改めてプロポーザル方式で業者選定が行なわれ、その結果昨年までの5業者から4業者に減らされた。今年度からまた3年間は業者を変えない方針だといわれている。しかし、いつ指定管理が導入されるかわからない状況である。どのような状況の変化があっても受託を継続していくことが私たちの最大の目標である。
指定管理制度になった時に複数の業者を指名する方針ならば、施設管理まで受託している現行業者は有利だと思われる。また現在私たちが自主事業として行っている数々の事業実績は、独立した図書館サービス提供が可能な団体としてアピールできるだろう。しかし中野区立図書館全館、あるいは地域館7館を同一業者に指名する場合もある。その場合、事業体としての規模、管理能力の信頼性において企業に勝ることは難しい。それに耐えうるだけの組織作りが現在の課題となっている。
2、組織作り
はじめに触れたように、非常勤職員の解雇に抵抗し自らで雇用確保するという事情の下でNPOを立ち上げた。そのため当初は元非常勤職員と元臨時職員の集団だった。しかしそこに留まっていてはNPOとしても受託業者としても限界がある。設立から4年、受託4年目に入り、もっと多くの人達の力を取り入れ「元非常勤NPO」からの脱却を図ることが次のステップだと考えている。
「図書館は人」だと言われる。これまでの公共図書館は公務員が型作ってきた。そこには、人が人を育てる、育ててもらうという連綿とした繋がりがあった。しかし民間委託になってその輪は途切れてしまった。私たちのNPOに限らず民間業者のスタッフは、今まで図書館を担ってきた多くの人達の知識も力も情熱も受け継ぐことができぬままに図書館に立ち向かっている。多くの人にNPOの活動に参加してもらったり協力していただき、再び図書館員の繋がりを作っていきたい。そして、委託や指定管理で図書館から引き離されてしまった人達の力を、再び図書館に生かしてもらえる橋渡しをしていきたい。
またNPOは、個人・団体・行政・企業などと立場と地域を越えて繋がることができる。自由な立場を生かした発想をすることが、NPOの活動の広がりになる。
一方受託業者としては、図書館サービスの質的能力だけでなく管理能力も問われる。そのため法人としての力をつけていくことも同時にやっていかなければならない。
現在プライバシーマーク取得のための準備を進めている。またスタッフと会員のメール連絡網を整備した。いままで自主事業の企画立案・実施は一部の会員で背負ってきたが、組織として取り組むように今年度からは各事業のプロジェクト・チームを立ち上げ、ばらばらな個人の集まり的集団から組織化された集団に変わろうと図っている。また、他団体との事業連携に積極的に取り組むことで調整能力をつけていきたい。
NPOは専門性やこころざしは認められながらも、管理能力やマネジメント能力的に素人集団と見られがちである。また、私たちだけでなく他のNPOが行政から業務委託を受けている例をみても、行政のNPO支援のエクスキューズや特殊な「訳あり」的な受託を感じる。NPOの良さをもちつつ、法人として企業と同じ社会的信頼を身に付けなければ、これからの委託・指定管理で生き残ってはいけないと考える。
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